大規模は「異質」を生みにくい
このような見方もあるのだ。日経ビジネスオンラインの対談で、花王元会長の常盤文克氏とボストンコンサルティングの御立尚資氏の「日本からはなぜアップルが生まれないのか」http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20120228/229259/?mlpで、以下のように語っている。(一部抜粋、原文のまま)
常盤:戦うに当たって重要な軸になるのが“質”です。月並みなモノを作っていたのでは、「同質」の中で優劣を争うことになってしまいます。今は、マーケットにないモノ、他社にないモノを作るという「異質」の優劣が問われる時代だと思います。異質で戦っている企業は、景気や市場動向に左右されることがありません。
御立:異質化は英語で言うと「ディファレンシエーション(differentiation)」。つまり差別化ですね。差別化の方法もいろいろあります。世界で一番規模を大きくする、他社と全く違うモノを作る、サービスも含めたトータルシステムで勝負する…という具合で、モノづくりのベースがある中で、異質なモデルを作っていくという方向で考えれば、まだまだやれることはあると思いますね。
常盤:異質化を実現する時には、企業のサイズも意外と重要だと思います。あまり大きすぎると異質を生み出しにくい。1000億~3000億円ぐらいの売り上げ規模が、異質に生きるうえで適しているように思います。
どうやら高品質は当然のこととして、これからは異質を標榜できる付加価値、イノベーションが特に求められてくるのではないかと説いているように思えてならない。さらに同対談では、ユーザー経験の重要性にも触れている。
本当のCSは修正や改良という「在来線」では限界がある
御立:アップルが本当に優れているのは、ユーザー経験を徹底して気持ち良くするために、使い勝手を仕組みから作り込んでいることです。加えて、実は非常に商売上手な会社でもある。自分たちが作った仕組みの中で、確実にお金を取り続けているんですね。
実直にモノを作り続けるだけではなく、ユーザー側から見た情報を徹底的に使い、ユーザーにとっての価値を高めながらモノを作る。それもただ作るだけではなく、お金の取り方なども含めた商売の土俵を作る。それが実にうまい。
モノづくりにおいては、こうしたユーザー経験が1つのキーワードになると思います。「使って、捨てて、リサイクルして」という流れの中で、ユーザーにとって価値があることとは何かを想像し、違った目で自分のビジネスを広く深く見ることができるか。この点が問われます。常盤:「お客様第一主義」とか「顧客満足(CS)の向上」といったキーワードを掲げる企業は多いのですが、その割にはお客様が発している情報やお客様が持っている知恵を上手に活用している企業は少ない。
機能を加えるとか、ちょっと改良するとか、今までの考え方やコンセプトを修正するだけでは限界がある。在来線をいくら引いてもダメです。アップルは新幹線を引いたんですね。日本企業との差はそこだと思います。日本企業もビジネスモデルのイノベーションを起こさないといけないですね。