「超小型モビリティ」が、日本の夢と経済成長を実現させる!

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クルマ好きの夢と言えばいろいろとあるだろうが、究極的には「自分だけのクルマを創り、運転する」ではないか? とは言え、実際のところそうはいかないから、せいぜい市販車のタイヤ&ホイールを換え、ボディパーツ(エアロパーツ)を装着したりするカスタマイジング(ドレスアップでもいい)が精一杯の「自己主張」だろう。
日本では、自動車自体が驚くほどの法的ルールに縛られている(それでどこかや何かが守られている面もある)から、そうそう一般素人ではカスタムに手を出せないのが実情だ。ましてや自分だけのクルマなど、夢のまた夢であるのが残念ながら現実。

群馬大学工学部客員教授の松村修二先生を中心に発足した群馬大学次世代EV研究会は、近距離での使用を前提にしたEV(μ-TT2)の市場投入を模索する。買い物や子どもの送迎など近場の利用を主目的とし、大手自動車メーカーが開発するEVとは明確に差別化を図る。価格は電池を除いて50万円以下に抑えるらしい。国に対して群馬県桐生市内でEVコミューターによる「EV特区」開設も働きかけた。


5月11日に現地EU圏で価格発表がされた超小型EV「ルノー・トゥイジー」。さすがにシティコミューター先進国のEVだけあって完成度は高く、超小型モビリティの一つの手本になるかもしれない。アーバン仕様の最高速は80km/h、一充電で約100km走行、価格は日本円で約89万円、バッテリーはリース方式で毎月支払額は約5600円という。

クルマとは、自由に移動できる「象徴」のような存在であるはずが、此度の大震災で思いのほか「不自由」であることも知らされた。前述のルールを守ろうが守るまいが、だ。
冒頭のクルマ好きの価値観はともかくとして、自動車という移動体の本質は、「その利用者にとって最善のツール(乗り物)」であるべきだ。そこには大企業を中心としたローコスト&ハイクオリティな最大公約数的ツールがあってもいいし、そうではないが、その人やその地域にとってはベストでオンリーワンなツールであってもいい。

さて、2月3日付の日経電子版に「軽より小型、定員2人コミューター規格を模索」と、やはり日経電子版の3月14日付に「次世代カテゴリーのクルマ、国交省が検討」の記事が載った。これ、実は画期的な構造変革を予感させる記事なのである。

自動車(ここでは商・乗用4輪車)とは、昭和26年に制定された道路運送車両法に基づいている(なんと60年前!)。大きく分けて自動車(普通車、小型車)、軽自動車、マイクロカー(原付自動車)の3つのカテゴリーしか現在は存在していない。そしてそれぞれのカテゴリーに税制や安全基準が細かく規定されていることはご承知のとおりだ。前述の記事の発信源はもちろん国土交通省である。つまり、施策レベルで新しいカテゴリー(4番目の)を確立しようとしているわけだ。


道路運送車両法上の規格寸法(単位はmm。最大値)

種類 全長 全幅 全高 備考
小型車 4700 1700 2000 いわゆる5ナンバー、2000cc以下のクルマ。
軽自動車 3400 1480 2000 現状では660cc。
旧軽自動車 3200 1400 2000 最初は360ccから始まった。
原付自動車 2500 1300 2000 一般的に一人乗りのマイクロカーと呼ばれる。

参考

ルノー・トゥイジー 2337 1191 1461 シティコミューターEV。大手メーカーとしては初。
日産新モビリティ・コンセプト 同上 同上 同上 2010年公開された日産版「トゥイジー」で、同様のタンデム2人乗りEV。
日産ランドグライダー 3100 1100 1425 2009年東京モーターショーで発表。全幅を必要最小限としたタンデム2人乗りEV。

「日産New Mobility CONCEPT」は昨年11月に公開された。「ルノー・トゥイジー」の基本コンポーネンツを使用する日産版。日産自動車のゼロエミッション・サイトにおいて、提案と同時にあらゆる意見を集約している途上にある。今後の展開が大いに楽しみ。


日産ランドグライダー。2009東京モーターショーに出展されたコンセプトカー。タンデム2人乗りのEVである点は「ルノー・トゥイジー」&「日産New Mobility CONCEPT」と共通だが、コーナリング時にはバイクのように傾斜させてハンドリングをも楽しめる「ファンな」4輪EVとしている。超小型モビリティの世界では、このような独創的なクルマが夢で終わらずに実現可能になるかもしれないところが刺激的だ。

「第4の自動車」が注目される理由

そもそもなぜ今なのか? 理由は「少子高齢化を背景に近場での移動に適したクルマの需要が高まっているため。高速道路を走れ(ら)ない分、安全基準を緩和して生産コストの低減につなげる。来年度に衝突安全性能基準を定め、12年度の通常国会にも道路運送車両法などの改正案を提出。環境負荷の小さいEVの普及を進めたい」という考えだ。

これ、おそらく誰も反対しないだろう。EV普及を最大のテーマにしている電気自動車普及協議会が3月末に行ったEVコンバージョンのガイドライン記者発表の際に「超小型モビリティ部会」の立ち上げを発表した理由や必然もそこにある。
5月某日、同部会の会合の際、提案として提示されたプラン概要が下記である。同協議会はEVコンバージョンもそうだが、何よりも「安全性の確保」を旨としながら、EV普及のためのあらゆる可能性を模索している。EVコンバージョンも超小型モビリティ(シティコミューターでもいい)も、大手自動車メーカー以外の企業が参加でき、プロダクトの裾野を広げる可能性にも注目しているのだ。
ここに成長や構造変化が内包されていることは間違いない。そして何よりも大切なことは、利用者目線に立った「賢い使い勝手のモビリティ」を創造していくことではないだろうか。


電気自動車普及協議会・超小型モビリティ部会提案

考え方 原付(自動車)以上、軽(軽自動車)未満。*国交省原案に基づく。
出力 30kw以下(約40馬力以下)。
サイズ 1案( 旧軽自動車枠)=全長3200 全幅1400 全高2000。一般道限定によって、衝突安全基準を緩和することが前提。
2案=全長3000 全幅1480 全高2000。現行軽自動車を踏襲し、衝突安全性を確保しながらも、定員4から2にすることで全長を短縮。
定員 2名。
走行範囲 一般道(高速道路、自動車専用道路は走行不可)。
最大積載量 350kg。
最高速度 一般道路法定速度(60km/h)+20km/h。
免許証 普通自動車免許証。

ヨーロッパでは古くからシティコミューター文化が浸透してきた。日本にもそのような構想があったこともあるが、その役割は事実上軽自動車が担ってきた。が、飽くなき技術進化と大型化は、軽自動車の性能、居住性を飛躍的に押し上げていった。軽自動車はもはや完全に4人乗り小型自動車の機能・性能を持ち合わせているのである。皮肉にも、それは同時に短距離移動用としてはオーバー・クオリティになったとも言えるのだ。

科学ジャーナリスト松浦晋也氏の提言が印象に残る。
『エンジンから電動モーターへという大きな技術革新が目前に迫っている今、現在の大メーカーがいつまでもその地位を維持できるとも限らない。もう一度、多数のプレイヤーの参入による「希望に満ちた混沌」が必要になりつつある。このような状況下では、安全性の確保は必要ではあるものの、一律であるべきではない。ベンチャー的な企業の参入を促すためには少量生産の自動車は、より簡易な型式認定で公道を走れるようにすべきなのである』(2011.5.20WIRED VISIONより一部抜粋)。
全く同感である。まるで超小型モビリティ構想のことを指摘しているかにさえ思える。
このカテゴリーが一日でも早く確立され、一日でも早く浸透し、様々な用途に対応できる多種多様なスペシャル・バージョンの総称としての1ジャンルを築いてほしいと願う。

最後にこれだけは言っておきたい。超小型モビリティは地方であれば、病院や買い物に使える簡易な移動手段(ロコミューター【筆者が勝手に作った造語】)。都市部であれば、文字通りシティコミューター的な移動手段になる。機動的かつ実用的でローコストな乗り物になることは間違いないのだが、対象年齢、性別、立場、用途などを意図的に限定させたくない。
このモビリティには、かつて成し得なかった「自由」というポテンシャルが秘められているからである。もとより「画一」は似合わないのだ。文字通り誰もが自由に発想、構想し、各地各方面の専門スペシャリストたちがそれをサポート(ビジネス)する。ありとあらゆる既成概念を超えていくエネルギーこそが、次世代モビリティへと発展していくパワーになるものと確信するからである。

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