レンジエクステンダーEV、いよいよ本格始動か!?

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奇しくも6月中旬の同じ時期にスズキ、そしてアウディ&マツダに関する注目すべき報道が飛び込んできた。
スズキに関する報道は昨年5月に型式指定を取得し、かねてより多方面で実証試験を行ってきた「スイフト・レンジエクステンダー(型式指定時の呼称はスイフト プラグインハイブリッド)」を、2013年をメドに市場投入する計画というもの。価格設定も200万円を切る予定らしく、消費者目線の価格にこだわるところはいかにもスズキ流。

スイフト レンジエクステンダーは発電用エンジンを搭載したEV。型式指定当時はプラグインハイブリッドの実証実験車。同社のスイフトをベースとし、リチウムイオン電池の電力で約15km走行ができる。発電用エンジンは660cc 直列3気筒の「K6A」型をベースに発電用に変更搭載され、バッテリー残量が少なくなるとこのエンジンを稼動し航続距離(レンジ)を延長(エクステンド)する。モーター出力は55kw(約75馬力)、PHEV燃費は37.6km/lとされている。写真ではプラグインハイブリッドとマーキングされているが、現在は「Range Extender」に変更されている。

スイフト レンジエクステンダー(プラグインハイブリッド)」の概念図

 

「e-tron」(イートロン)の名称はアウディEVのブランド名になる。A1 e-tronはアウディA1をベースとし、バッテリーやモーターとともに、リアには発電用ロータリーエンジンを搭載。バッテリー容量が足りなくなるとロータリーエンジンで発電して走行を続ける、文字通りのレンジエクステンダーEV。ロータリーエンジンがどのような燃料で動くかは現時点ではさだかではないが、15Kw(約20馬力)の出力を生み出す。EUで検討されているハイブリッドカーの燃費基準によると同車の燃費はリッター当たり53kmを可能にするといわれる。

アウディの方は、昨年3月のジュネーブショーに出展したレンジエクステンダーEV「A1 eトロン」に搭載された発電用エンジンがロータリー(ショーモデルでは254cc)だった
そもそもロータリーエンジンは、アウディ傘下になる前のNSUが開発し、「Ro80」(1967~1977年)というロータリー搭載車が市販されたが、以来現在に至るまでNSUのライセンスを受けて開発・改良と市販を貫き通したのは日本のマツダだけなのである。そこでアウディが、軽量コンパクトなロータリーエンジンを発電用エンジンとして使うことで、マツダとの何らかの提携を模索したとしても何も不思議はない。

アウディA1 e-tronの構造概念図

さて、スズキとアウディ両社がレンジエクステンダーEVで何らかの連携をしていることはあり得ないが、偶然にもスズキが以前提携関係にあったGMが、今社運を賭けているのはレンジエクステンダーEVの「シボレー・ボルト」だし、現在スズキがGMとの提携解消後に強力な提携先としているVWの傘下にアウディはある。これって、本当に偶然なのだろうか。

軽量、コンパクト、高性能、低燃費にこだわってきた日本の内燃機関技術

この両社の発電用エンジンに共通しているのは、片や日本が誇る軽量コンパクトの代名詞である軽自動車用660ccエンジンを使用していること。片や、やはり軽量コンパクトが最大の強みであるドイツ生まれ日本(マツダ)育ちのロータリーエンジンであることだ。つまり両エンジンに直接の関係はないが、発電用エンジンで威力を発揮するのは、日本が誇る小排気量にして高性能・低燃費のエンジン技術ということだ。前述のシボレー・ボルトの発電(駆動用にも使用)エンジンは1400cc・4気筒(エンジンルームを席巻している)だから、その違いは歴然である。

レンジエクステンダーEVについては、当サイトの別のコラムでも何度か紹介してきたが、改めて説明すると、このシステムの基本動力はEV同様モーターであり、航続距離の不安を払拭するためにバッテリー充電用としての発電エンジンを搭載する。理屈としてはバッテリー切れの心配がない(発電エンジンの燃料は要る)ことになる。レンジエクステンダーとは文字通り「航続距離延長装置」と直訳され、今後の展開に大いに期待が集まっている次世代技術なのである。この呼称は自動車の分類上確立されたものではなく、機構的にはハイブリッド・カテゴリーに属するが、今後は独立した一つのカテゴリーに発展するものと予想する。
その市販モデルとしての草分けは前述のGMのシボレー・ボルトであるが、ここで紹介しているスズキ、アウディはもちろん、三菱自動車の次世代PHEVもレンジエクステンダー機能が組み込まれる可能性が高い。

スイフト・レンジエクステンダーの概略図を見ていただければお分かりのように、モーター、インバーター、バッテリーが重要な役割を担っている。これらがさらなる進化を遂げなければならないことは自明のことで、それは並行してEV技術自体の進化・発展にも寄与することになる。
インホイールモーター技術、レアアース不要のモーター技術、実用はずっと先になるだろうがMITの学生が考案した充電液交換型の短時間充電方式など、日々EV関連技術は進化とまい進を遂げている。

震災前にはほとんど誰も考えなかった「電源としての自動車」もEV、PHEVは言うに及ばず、レンジエクステンダーEVにもその機能は搭載できるはずだ。
次世代自動車に要求されることとは、環境対応や燃料コストの大幅低減はもちろんのことだが、どうやら走ること以外のライフスタイルにも貢献できることなのかもしれない。

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