前回直前情報をお届けした直後にホンダから東京モーターショーの内容がリリースされた。自動車メーカーの中でも毎回多くの注目を集める同社に対し、ユーザーの期待感はきわめて高い。ホンダに求められるものは常に「先進性」と「創造性」だ。ユーザーは常にそこに注目している。
今年もそのような期待を裏切らず、ホンダ・ブースは多くの注目を浴びそうだ。その目玉はなんと言っても「AC-X」だろう。次世代PHVであることは、「ホンダの次」を示唆しているし、そのスペックはどの「従来」よりも傑出している。同車に搭載される「自動運転モード」は一見オマケのように見えるかもしれないが、同社が次世代を見据えて取り組むテーマの一つであることを匂わせる。先日最先端ロボットの「次世代アシモ」をリリースしたことともおそらく無関係ではないだろう。
非自動車メーカーの展示では、あえて東レとNTNを紹介した。今後のモビリティの展望の中に「先端素材」と「インホイールモーターなどEV周辺技術」が重要な意味を持つからだ。そして、ガリバーと思われてきた自動車メーカーが、これからは単独ではなく、あらゆる先端テクノロジーや異業種ともタッグを組まざるを得ないことを暗に示唆していることでもある。
ホンダ・AC-X
「AC-X」(Advanced Cruiser-X)は、1.6ℓエンジンと120kWの高出力モーターを搭載するプラグインハイブリッド型のコンセプトモデル。エンジン走行モード、EV走行モードに加え、なんと自動運転モードをも備える。自動運転モード時にはステアリングはインパネにすっかり格納されるというアドバンスぶり。かなり遠い未来のクルマのように見えるAC-Xだが、近未来のホンダデザインとテクノロジーのヒントが随所に集約されている。ホンダでは2モーター式HVなどのテストも鋭意行っているようで、意外と早い時期の市販モデルへのフィードバックも夢ではなさそうだ。全長×全幅×全高:4700×1820×1400mm/ホイールベース:2750mm/EV最高速度:100km/h/最大航続距離:1000km以上/EV航続距離:50km/燃費:110km/ℓ(プラグインハイブリッド)・36km/ℓ(ハイブリッド)/モーター:120kW/エンジン:1.6ℓ 95kW。(出典:ホンダ)
ホンダMICRO COMMUTER CONCEPT
「未来都市型ケータイ・パワースーツ」というコンセプトの電動モビリティが「MICRO COMMUTER CONCEPT」だ。ホンダがずっと以前から唱え続けてきたM・M(マンマキシマム・メカミニマム)思想を基本に、超小型サイズながらフロントにドライバー、後方にプラス2的な2座の1+2シーター構成。また運転席横には、電動折り畳み式バイク「MOTOR COMPO」が搭載可能。インパネにはスマートフォンがセットされる。MOTOR COMPOの取り外し式バッテリーは、エアコンやオーディオ用のユーティリティ電源としても活用可能。また回生エネルギーにより、LOOP BATTERYを充電することも出来るというスグレものだ。全長×全幅×全高:2500×1250×1430mm/ホイールベース:1860mm/最高速度:60km/h以上/加速:0-60km/h加速7.4秒/最大航続距離:約60km/充電時間:1時間以下(200V)・2時間以下(100V)/バッテリー種類:リチウムイオンバッテリー・3.3kWh/バッテリー最大出力:16.7kW。(出典:ホンダ)
ホンダ・スモールスポーツ EVコンセプト(仮称)
「スモールスポーツ EVコンセプト」はリリースによると「走る楽しみを最大限に具現化しながら、高い環境性能を備えた次世代EVスポーツモデル」とだけある。つまり、電気自動車で、スポーツモデルで、2シーターのオープンモデルで、コンパクトなボディであることは分かるが、それ以外は実物を見て感じてください、ということらしい。(出典:ホンダ)
ホンダMOTOR COMPO
二輪車の手軽で便利な機動性に加え、「乗らないときでも使える」ことを目指した、超コンパクトEVコミューターだ。「MICRO COMMUTER CONCEPT」に搭載可能の着脱式走行用バッテリーは、通常電源としても活用できる。オールドホンダファンには、かつての小型バイクを彷彿とさせる「MOTOR COMPO」はもちろん折りたたみ式で、立てても保管出来る省スペース型の超小型電動バイク。取り外し式ループバッテリーは非常時の携帯用電源としても使えるなど、実現すれば様々活用方法が広がるだろう。全長×全幅×全高:930×489×957mm。(出典:ホンダ)
ホンダE-CANOPY
ホンダ独自の三輪スクーターにEVシステムを搭載した静かで快適な次世代コミューター。パーソナルユースのみならず、ビルトイン可能なリアトランクの採用により、デリバリーなどビジネスユースにも活用できる。いわば三輪スクーター「スリーター」の電動版。雨風対応のキャノピーが付いているから、商用はもちろん、個人ユーザーにも有効だろう。全長×全幅×全高:1600×720×1680mm(ボックス付きは全長1770mm)。(出典:ホンダ)
ホンダRC-E
往年のレーシングマシン「RC」を彷彿とさせるレトロなフォルムを生かしてEV化し、走りの歓びを追求したEVスーパースポーツバイク。250ccクラス並みのコンパクトな車体サイズで、EVのトルクフルでスムーズな走りを楽しめる。バッテリーは本来のガソリンタンク位置と車体下部に分けて搭載される。またモーターはスイングアームのピボットと同軸に置かれているという。(出典:ホンダ)
スバル アドバンスド ツアラー コンセプト
スバル アドバンスド ツアラー コンセプトは、走りの楽しさと環境性能を高次元でバランスさせた「革新スポーツツアラー」をテーマに、同社の掲げる“Confidence in Motion”を具現化した。エンジンは今後のスバルの方向性を示す1600cc直噴ターボの水平対向4気筒エンジン。コンパクト時代を反映したダウンサイジングを行い、常用域での大幅な燃焼効率改善を実現させた。注目は同社独自のハイブリッドシステム。これは、シングルモーター式としており、シンプルで軽量な構造が最大特徴。電池はリチウムイオンバッテリーで、先進運転支援システム「Eye Sight(ver.2)」も、認知可能範囲などを拡大させている。サイズは、4580×1840×1430mm(全長×全幅×全高)。(出典:富士重工業)
東レ・ティーウェイヴAR1と
NTN電動コミューター用インホイールモーター・システム
ブルーの2座オープンカーは東レが単独で約3億円を投じ、イギリスやドイツなどで試作、テストを行ったEVだ。同社は「炭素繊維でどれだけの乗用車を作れるか、極限を試すための実験」との狙いを明確に示している。炭素繊維は鉄の10倍の強度、重さは4分の1という先端素材であることは周知のこと。東レの挑戦は、次世代モビリティに素材メーカーが大きく貢献、連係できることを具体的に提示している。(本サイトに関連記事)
一方NTNはインホイールモーター・システムの開発実用化を推進すると同時に、「電動コミューター用インホイールモーター・システムを展開する。買い物·や通勤などの近距離走行や、乗降しやすい高齢者にやさしいEV、EVタウンでの実用に適した2人乗りなどの電動コミューターや一人乗りの電動ミニカーでの活用が期待される。具体的にはタジマモーターコーポレーションとタッグを組み、磐田市での実証実験を展開し、駐車や狭幅道路での転回など、インホイールモーターの利点を最大限に生かしたモビリティを開発している。
素材メーカーとEV技術メーカーなど、従来にはない非自動車メーカーの活躍が次世代モビリティの開発、普及には大きなファクターになることを示唆しているのである。(出典:東レ、NTN)