再生可能エネルギーを考える
菅さん、「スピード」と「唐突」は違う!

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「辞めると言って辞めない総理」と「揚げ足取り全開の野党」。多分、この現実を国民から言わせれば「救い難い政治不信」と言うのだろう。
誰が考えても今政治に求められている最優先課題は、

  • 被災者、避難生活者の劣悪な生活環境をごく普通の水準にまで戻す。
  • 速やかにガレキなどを撤去し、即刻必要最低限のインフラ整備ぐらいまでは復旧させる。
  • 福島第一原発事故の収束はもちろんだが、それに伴う放射線の飛散状況を詳細に検証し、全国民が分かりやすいように対処法を公開、かつ国の責任で健康管理などを保障する。他の原発にも明確な基準を設定し施行する。
  • そして同時並行で「復興・新生」の実行。ここでは経済活動からエネルギー問題まで国民生活全域に渡る課題が含まれるため、まさに英知と行動力と勇気が求められる。

これほどまで与野党、メディアからバッシングされた総理も珍しい体の菅総理。6月22日、番記者から「今一番の思いは?」と問われて、公邸に入る際に「復旧、復興、自然エネルギー」と答えた。これって何も間違っていない。しかし実態は与野党を超えてこれらのことを実行する手続きと指導力に「?」を突きつけられたことだ。自民党の河野太郎議員が、国会会期延長にあたり同党議員総会で「政党を超えて、震災復興にあたるのが政治の務め」と党に反旗を翻し会期延長に賛成、政治家の意地を見せた。それにしても50日なら良くて、70日だとダメというのは一体何を根拠で言っているのだろう。政局絡みってことがバレバレだから国民から愛想を尽かされるのではないか。

さて表題にある「唐突」であるが、菅総理は特例公債法案や第2次補正予算案に加えて(総理を辞めるにあたり?)再生可能エネルギー特別措置法案の成立をぶち上げたことに端を発する。
実はこの法案、奇しくも3月11日(大震災当日)の午前中に閣議決定されたもの。民主党のマニフェスト2010に明記されてもいるから、その意味では「唐突」ではないし、予定の行動ととれないこともない。さらに菅総理自身が30年も前から自然エネルギー活用のテーマ実現を目指していたという(ほとんど知られていないが)。
だとしたら、所信表明演説で説いた「最小不幸社会」(誰から見ても抽象的過ぎて心に響かない)とは一体何だったのか、なぜ再生可能エネルギーの重要性について熱弁をふるわなかったのか合点がいかない。「思いつき」や「唐突」と言われる(思われてしまう)所以はどうやらそこらへんにあるようだ。良し悪しはともかく、小泉元総理は終始一貫して「郵政民営化」を貫いた。少なくても言葉として受け取る側は理解しやすかったに違いない(中身の細かな認識はともかくだが)。

再生可能エネルギーとの取り組み、施策が近未来の日本にとって最重要課題であることは疑いようがないし、国民の多くもそう考えるものと信じる。が、菅総理の姿勢というか、一貫性の欠如というか、説明力の稚拙さに、皆が呆れているから永田町内の「辞めろコール」に80%もの国民が格別反対しないのではないだろうか。
メディアが想像で報じているような、「脱原発」(民主党は原発推進策を採っていた。もしその方針を変えるならその理由と説明が不可欠)を政局(解散総選挙)の道具に使うことがあるようなら、もはや論外。そうではないと信じるしかないが、ソフトバンク孫社長が中心の同法案成立決起集会に現れて熱弁をふるった姿は、どう考えても一国会議員の所業であり、もはや一国の宰相の姿とは思えない。国民は、そういうパフォーマンスもどきには辟易としているし、孫さんもせっかく意義深く壮大なこと(メガソーラー構想)と取り組んでいるのに、逆に胡散臭くとられたらかえってイメージダウンになるのでは、と危惧さえしてしまう。

「脱原発」と「再生可能エネルギー推進」は、関連はするが同義語ではない。むろん、この原発事故をうけて原発の成り立ちから安全性、事故後の対応までを再検証することは国際的な見地からも当然のことだが、ここで言うエネルギー(主に電力流通)法案最大の目的は、発電、送電、蓄電、売買電などが、利用者にとってコストも含めて最もリスクの少ない、今考えられる(政治主導だからこそ実現できる)理想的で最良の方法に転化させることだ。そこで必要なことは何なのかをフェアな観点から決定し、速やかに実行することなのである。微塵も政治や行政の利害などであってはならない。

そこで要求されることこそがまさに政治に求められる「スピード」ではないか。エネルギー問題は菅さん一人の問題ではない。党(民主)の幹部から、「今、そんなこと決めてる場合じゃねえだろ!」などと揶揄されること自体が、環境づくり下手の菅さんと罵られ、支持を失っているようにさえ思えてしかたがない。
懸念されるのは、同法案が与野党の脱・菅という空気から、ちゃんとした審議を経ることなく藻屑と化してしまうことだ。電力買い取り制度や送電の仕組み変更なくして(段階的でいい)、後述するような電力の「小規模分散型」社会は夢物語になってしまうからだ。次期政権がいかなるものになろうと、震災復旧・復興(新生)とエネルギー問題はセットで取り組んでほしい。

電力は「大規模集中型」から「小規模分散型」の時代

本題に入る。個人的には再生可能エネルギー特別措置法案の速やかな成立には大いに期待する。が、国民にとって大切な目的は法案自体の成立ではなく、それによって日々の生活がどのように発展的になるかこそが重要だ。法案ではないが再生可能エネルギーに関することは、データなども含めナショナルジオグラフィック日本版「見てわかる 再生可能エネルギー」 に詳しく述べられているので、ぜひ一度目を通していただきたい。

このサイトの提言PART1「エネルギーはどうなる?」で、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏が主張されていることを要約すると、

  • 再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、水力、バイオマス、地熱など、エネルギーを供給する基盤が日々更新される持続可能なエネルギーのことを言う。
  • すでに海外では、農業革命・産業革命・IT革命に続く「第4の革命」と呼ばれるほど、再生可能エネルギーの市場は急成長を遂げつつある。
  • 発電コストの高さが指摘されていた太陽光発電も、新設では2010年に原子力の発電コストを下回ったとされ、今後急速に市場が拡大すると見られている。
  • 世界は再生可能エネルギーへの転換を加速させているが、日本はこうした流れから完全に取り残された。
  • 原発事故は確かに不幸な出来事だったが、前向きな見方をすれば、再生可能エネルギーへ大胆な転換を図るための好機。
  • ドイツは、再生可能エネルギー関連投資によって経済を大きく浮上させた。2000年にフィード・イン・タリフ(FIT)という再生可能エネルギー普及策を導入して以降、2008年までに5兆円の経済効果を生み出し、2010年までに37万人の雇用を創出した。
  • 太陽光発電市場でも、2002年から太陽電池モジュールを製造している米国ファースト・ソーラー社が1兆円企業に育っている。グリーンテックベンチャーは世界で増え続けているが、残念ながら日本ではここまで躍進している企業はない。
  • 発電設備の導入を容易にするための電力買い取り制度や補助金も重要な施策だが、もっと大切なことは、地域社会を構成する市民一人ひとりが、エネルギーの供給と利用について真剣に考え、実践することではないか。
  • 例えばデンマークでは地域でつくられたエネルギーは市民が利用し、余剰が出れば他の地域に売る。市民が効率よくエネルギーを生産し、利用すればするほど、自分たちの暮らしも潤う仕組みになっている。
  • 今後、エネルギー供給のあり方は、従来のように遠方の発電所から一方的に送られてくる「大規模集中型」から、地域で必要なだけ電力をつくって共有し合う「小規模分散型」へと変わっていくだろう。

日本には「エネルギー永続地帯」が57ヶ所もある!

飯田 哲也氏 
NPO法人環境エネルギー政策研究所長。京都大学原子核工学専攻修了後、大手鉄鋼メーカー、電力関連研究機関原子力R&Dに従事。自然エネルギーの市民出資やグリーン電力のスキームと実践を手がける。3・11の大震災後、エネルギー・原子力戦略を打ち出す。主著に「北欧のエネルギーデモクラシー」などがあり、TV報道番組にコメンテーターとしての出演も多数。


倉阪 秀史氏 
千葉大学法経学部教授。東京大学経済学部卒。環境庁(現環境省)に入庁。地球温暖化対策やリサイクル問題・企業環境対策などを手がける。米メリーランド大学客員研究員などを経て千葉大学法経学部助教授から現職へ。21世紀COE「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」公共政策セクションリーダーも務めている。

PART2「再生可能エネルギーの潜在力」で千葉大教授の倉坂秀史氏は、

  • 諸外国の2020年までの再生可能エネルギー割合が20%程度と高いのと比べ、日本は1.7~2.5%と圧倒的に低い。
  • 日本の再生可能エネルギーは、計算上は日本の消費量をすべてまかなえるほどある。
  • 日本が有する「エネルギー永続地帯」は全国になんと57ヶ所もある。
  • 国内の再生可能エネルギー供給量伸び率はわずか2.3%。このままでは供給量が倍増するのに30年かかる。
  • 再生可能エネルギーを普及させるためには、
    1. 国と地方自治体、市民が連携し、それぞれの役割をきちんと果たす。
    2. 国は太陽光だけでなく、再生可能エネルギーの全種全量を対象に電力の固定買い取り制度を実施。投資回収年数は10年程度。
    3. 現在の縦割り行政(例えば水力は国交省、太陽光は経産省、バイオマスは農水省という既存の所轄意識や仕組み)をやめ、持続可能エネルギーの統括組織を置く。
    4. 地方自治体は独自のエネルギー政策を立ち上げ、再生可能エネルギー導入計画と都市(コミュニティ作り)計画を一体化して取り組む。
    5. 例えば東北地域には地熱、小水力、洋上風力、バイオマスといった大きなポテンシャルがある。
  • 再生可能エネルギー供給による内訳は2009年調査によると、
    • 太陽光発電=6.75%(課題はコストだったが、日々変化しつつある)
    • 風力発電=13.3%(課題は洋上風力の建設コスト)
    • 地熱発電=8.46%(課題、日本は世界3位の火山国でありながら初期投資額が大きい)
    • 小水力発電=45.84%(あまり注目されていないが、再生可能エネルギー供給の約半分を担う。トップは富山市の神通川。課題は手続きの煩雑さ)
    • バイオマス発電=2.81%(間伐材を使った地産地消に期待)

実に分かりやすい。両氏ともに共通していることとして「大切なことは利用者(市民)の意識」と断じていることだ。原発(放射能)にヒステリックになることは十分理解できる。が、ただ文句をたれるだけではなんの問題解決にもならないことも事実。
今こそ市民の総意というものを、地域の自治体や商工会を介して集約させることが肝心だ。いまや「(永田町の)誰がやるのか(誰に依存するのか)」というよりも、日本の実情と世界の潮流を鑑みて「自分たちなら何ができ、どう進めるか」が重要ではないだろうか。

おそらく電気自動車とシステムもその真っ只中にいる。
自動車は電気自動車に限らず、相応の時間をかけて実証試験を繰り返す。此度の震災を機に中央主導を超えて、地域主導の「エネルギー地産地消」の実証試験から始められないものだろうか。その呼称が「特区」であろうと「マイクログリッド」であろうと構わない。大事なことは名称や管轄官庁ではなく、あくまで地域住民の実態生活の向上と利益なのだから・・・・。
国は、自治体なり民間企業なりがストレスなくスムーズに動けるような仕組みだけを作ればいい。法案の良し悪しは、そこがすべてであると断言する。

飯田氏の言葉を借りれば、電力は「大規模集中型」から、地域で必要なだけ電力を創って共有し合う「小規模分散型」へと変わっていくだろう。いや、変わっていかなければならない。そして実践されるべき時は今をおいて他にない。感情的に原発の賛否だけで何かを進めようとするのは、あまりにも不毛ではないだろうか。


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