日本の総理大臣が替わろうが、円高などで日本経済が五重苦、六重苦に喘ごうが、日本の生きる道は「ホンモノの技術熟成とモノ作り」だと信じている。
日本という国は360度海に囲まれた海洋と水の恵みに富んだ国家である反面、いわゆる化石エネルギーとはほぼ無縁の国だ。であれば、可能な限りそのようなエネルギー資源に依存せずとも生きていける術がウリであるべきで、震災と原発事故があって初めて言われるようになった「再生可能エネルギー」への取り組みなど、もとより当然のことだったはずだ。持続可能社会を本気で目指すならば、取り組むべきは形骸化された「○○依存からの脱却」ではなかっただろうか。
もはや、コレがなくなってアレが普及したらドコとナニが困るから、などという霞ヶ関的ロジック、一見公平主義とはどこかでオサラバしなければ、真のイノベーションなど確立できるはずもない。
さて、EV関連技術の進化のスピードが加速していることは間違いないことだが、相変わらず「国」として明確な目標や施策を掲げられていないことも事実。そんな中でも今回注目したのは「レアアース不要モーター技術」と「非接触充電技術」だ。いずれも開発途上にある技術であることは事実だが、○○依存からの脱却やEVの飛躍的な利便性を実現させるには、すでに「夢」ではない技術とも言えそうだ。
不可能を可能にすることこそ日本のお家芸
レアアース不要モーターの開発が加速するようになったきっかけは、ご承知のとおり原材料のレアアースを中国からの輸入に依存してきた折、日中間の政治問題に左右され過ぎることが判明、そんなものなくてもモーターは出来る! という技術と向き合った結果だ。
最近の動向は下記の表をご覧いただくとして、現在分かっている限りでは、官関係ではNEDO(当然だろうが)、学界では北海道大学と東京理科大学、企業ではトヨタが同技術推進に積極的な姿勢を示している。
最新の報道によると、課題としては未だ効率、騒音、振動が一定レベルに達していないということだが、さらに研究が進めば現状モーターに引けをとらない、という頼もしい展望もある。大いに期待したい。
レアアース不要モーター開発の動向
報道日 | タイトル | 概要 | ソース |
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2010.09.29 |
レアアース使わぬモーター開発 NEDOと北大 |
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共同通信 |
2011.01.14 |
トヨタ:脱レアアースへ-次世代ハイブリッド・EV用モーター開発中 |
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ブルームバーグ |
2011.07.23 |
東京理科大学などが脱レアアース・モーター搭載のEV |
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youtube |
2011.08.29 |
東京理科大学、レアアース不要の電気自動車モーターを開発 |
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サーチナ |
MIT発ワイトリシティ社の技術に熱い視線
EVが充電インフラに頼らざるを得ないことは申すまでもない。第一ステージとしての「充電インフラ」は「いわゆる定置式のケーブルを介する充電器」。で、次世代ステージともいうべき充電インフラが「非接触充電」と言われている。文字通りプラグなどの接触器具を経ずに、無線で2次電池に充電する技術。充電器とEVとの接点がないため、耐久性や接点不良、水分などによる漏電の心配が少ない。
代表的な技術としては、電磁誘導方式、電波受信方式、共鳴方式の3種類があり、実用化されている方式はコイルからコイルへ電力を給電する電磁誘導方式だ。この方式だと充電位置の確度が求められ、位置変化による効率低下もある。さらに電磁波、高周波への対策も要求される。そこで最近では電界や磁界を用いた共鳴方式の非接触充電システムの開発に注目が集まっている。下記表にあるMITの研究成果がまさにそれである。
非接触充電に関する動向
報道日 | タイトル | 概要 | ソース |
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2010.10.05 |
パイオニア,EV向けに電磁誘導方式の非接触充電器を参考出品 |
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Tech on |
2010.10.22 |
デルファイ社、ワイトリシティ社とEV/HEV向け非接触充電システムの開発で協力 |
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Tech on |
2011.02.25 |
EV実験に熱視線 プレート通過 走行充電 福岡の企業が開発 |
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西日本新聞 |
2011.04.28 |
トヨタ、ワイヤレスでEV充電 米ワイトリシティと提携 |
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エクール |
2011.06.15 |
駐車するだけでEV充電 IHI、ケーブル不要の装置開発へ |
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MSN産経ニュース |
非接触充電の概念図。地面には定置式充電器を埋め込み、車両側には受電車載器を取り付ける。イラストのように個人の駐車場、大規模、中小規模の駐車場など条件を問わない。(出典:ワイトリシティ)
出力3.3kWの非接触給電評価機。IHIのリリースによると磁界共鳴方式とは、ブランコを押すときブランコが行って戻ってくる時間にちょうど合わせて押すとブランコが大きく揺らすことができるのと同じように、送電装置と受電装置の共振周波数がほとんど同じ時、間の磁場を通って送電装置と受電装置の間で共鳴が起こる。磁界共鳴方式ではその共鳴を利用して送電装置と受電装置が離れていても効率良く電力を送ることができるという。(出典:IHI)
次世代非接触充電技術は、日米大手、ベンチャー企業が中心となって進んでいくものと思われる。今後はMITが開発した共鳴方式の非接触充電技術の技術移転を受けた米ベンチャーのワイトリシティ社が中心となって推移しそうだ。
提携や協業など、すでに米国内では部品最大手のデルファイ社(2005年に破綻、2009年破産法適用から脱却。破綻前の2004年には古河電工とワイヤーハーネスの合弁会社を設立した経緯もある)とは2010年10月に同技術開発で協力。日本企業では2011年4月にトヨタがワイトリシティ社の増資引き受けも含めた提携を発表している。又直後の6月にIHIがワイトリシティ社との協業を発表している。まさに日米超大手企業が注目していることが歴然の技術と言えよう。
少し残念なのは、最初の発明が日本ではなくアメリカの大学であったことだが、より良い技術に熟成させていくのが「日本」という選択もあっていいのかもしれない。