フル充電で600キロ走行可能な電気自動車の2030年実現を目指した自動車専用蓄電池の開発が来月本格化する。高性能の次世代蓄電池を作る基礎研究のため、蓄電池内部のメカニズムを詳細に解析できる世界初の専用装置「中性子ビームライン」が茨城県東海村に完成した。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進めるプロジェクト。京都大、東北大をはじめ10大学、高エネルギー加速器研究機構など4研究機関、自動車や電池など12企業が参画する。リチウムイオン電池は1990年代に日本で実用化され、携帯電話やノートパソコンなどの電子機器に搭載されて普及、電気自動車でも使われている。しかし、充放電中に内部で何が起きているのかや、使用するうちに劣化する仕組みはよく分かっていない。この謎を解明するため、東海村の大強度陽子加速器施設(J−PARC)に専用の研究施設SPICA(スピカ)を新設した。ほぼ光速の中性子ビームをリチウムイオン電池に照射し、内部のリチウム、酸素やマンガン原子の動きを一つずつとらえる。